5.16.2017

IZU

小田原、早川の交差点を左に曲がって国道135号線を走り始めた途端、いつも旅の気分が溢れてくる。石橋の集落を過ぎたら、国道と並行して走る県道に入る。蜜柑畑や採石場、いくつかの集落を抜けていくこの道は山の中腹からの眺めと適度なワインディングが続き、気持ちよく走ることができる。オートバイを停めて、蜜柑の甘い香りとともに眼下に広がる相模灘を見渡せば、カラダは解放感に満たされる。

真鶴駅を過ぎて国道と合流すると湯河原の海に向かって駆け下りていく。地形に沿ってアップダウンとカーブを繰り返し、熱海まで海沿いの国道は続く。オートバイを操る楽しさをあらためて実感させてくれる道だ。

半島の肩に位置する伊東を過ぎると明らかに植生が変わり、包み込まれるような緑が出迎えてくれる。国道を外れて川奈、富戸、城ヶ崎へと続く道を行く。昔からそこに存在していたであろう斜面に家々が連なる小さな集落や、リゾートとして開発された端正な景観など、さまざまな景色が肩越しに過ぎ去っていく。

伊豆高原で一度国道に合流して少し走り、赤沢からは再び山側に国道と並行して延びる道に入る。緑は濃くなり、道路に覆い被さって木々のトンネルを形作る。雨上がりの森が発する濃密な薫りに混じって、ときおり鼻をかすめる花の香り。そして、温泉町の人々とその暮らしが醸し出す穏やかな雰囲気。熱川の先まで続くこの道は本当に素敵だ。

その後、国道はいくつかの温泉街や海水浴場を通って下田まで続く。河津から下田へと向かう途中には深い緑に隠された小さな入り江やそこに至る未舗装の小道、プライベートビーチのような魅力的な砂浜などが点在している。そんな秘密めいた場所を探しながら、気ままにオートバイを走らせるのは楽しい。

下田という街は目的地としてふさわしいと言える。古い歴史を持ち、それを物語る史跡も多い。オートバイを停めて少し散策する。この地方独特の造りが魅力的なお寺でのんびりしている頃にはお腹が減ってくる。こんなとき僕はきまって昔から地元の人に愛されてきたレストランや食堂を探す。祖父母に連れられた小さな女の子や、店主の友人夫婦が和やかに会話しているような店だ。

美味しい食事で空腹を満たしたら、心地よい場所で飲むコーヒーを求めて少し走る。いつもそうだ。なんとなく旅の締めくくりにはコーヒーを飲んでいる。海岸に建つリゾートホテルのティールームで屋外のテラスにある席に腰掛ける。目の前には大きな松の木ときれいな砂浜が広がっている。季節はずれの今はまだほとんど人の姿はない。コーヒーを運んできてくれた女性が笑顔で囁く。「風が気持ちいいですね」。
その一言で僕の旅は完結した。





ふらふらと気ままに走る旅にCTは絶好のパートナーだ。


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